むらかみだいあり

買ったものとかおんがくとかの記録。2003年以前は手元に残っているもののみ。

V.A.「Mafina PRESENTS Tour "ハ・ラ・ワ・レ・タ・ト・キ" style 2012 Disc of frisbee」

トゥウィッターのフォロワーさんが9月下旬に本州縦断ツアーを決行された際に作られ、その際いただいたビジュアル系私製コンピ。ビジュアル系レーベルのMatinaっぽいMafinaというなまえは、その方のコンピブランド(と解釈してる)。過去にも何枚かいただいていて、本作「Disc of frisbee」はフリスビー盤、言ってみれば「聴くくらいならフリスビーとして利用した方がマシ」レベルの楽曲を集めたもの。この方とコンピを交換するとだいたいバンドがかぶらない(収集、購入の志向が異なる)のでおもしろい! 本盤はレビューしなければならないみたいなので、いただいて日が経っているけどレビュー。

1. 血賛歌 / QROSS
開始数秒で耳を疑うボェーカルが語り始めて、何の予備知識もなく聴くと吹き出し不可避である。つかみはバッチリだ! それよりはるかにうまい低音コーラスが後ろに聞こえるのだけど、これがミサに聴こえて困る。いつ歌が始まるのかと思いながら単調なシャッフルビート(ただの12/8拍子かも)を聴いていると、ウアゥアゥアゥもがきながら語るのをやめないボェーカル! そのまま終わって二度耳を疑う。

2. ネクロフィリア / 憬架-keika-
前の曲が、傀儡がどうこう言いながらフェイドアウトしていく中、こちらは「傀儡人形の、君ヘェ・・・」というカットイン! この繋ぎはきっと長年あたためていたに違いない、抜群の繋ぎ! 憬架の曲は他に一曲聴いたことがあって、そちらはヒドいものであったが、この曲は語りからのシャウト曲ということでまだ聴ける。ただ、語りのバックでリャァ〜ンリャァ〜ンと鳴ってるやる気のないギターがひどい。サビ?が始まる直前のシンセっぽい音の急激なクレッシェンドはけっこう好き。後半は何を言っているのかさっぱりわからないシャウトでヤゥヤゥヤゥ言ったり、アァゥアァゥもがいたりして終わる。

3. unrequited Love / ewig≒zait
打ち込みドラムのキックにギターの単音というイントロの出だしでダメそうな雰囲気が出ているが、演奏が本格的に始まると案外と普通というかベタなリフ、ただボーカルが入るとまたずっこける、というつくり。ボーカルの音程がところどころでミラクルを起こしている。単に高音が苦しいだけなのかもしれない。あとドラムの打ち込みがどうにも安っぽく、音質も相俟って宅録感しかない。この曲にもコーラス的使い方で語りが入っている。本当にみんな語り好きね・・・

4. 毒の花 / Luna de miel
音がこもってはっきりしないが、たぶんタイトルコールを行ったうえで演奏を始めている。曲はよくある感じで、ビジュアルはコテコテだったんだろうなーと想像される。ボーカルのエフェクトが強め? マイクの問題なのだろうか? 違和感がけっこうある。高音はやっぱり辛そうだけど、ewig≒zaitよりだいぶマシ。ドラムが生ドラムっぽいし、ベタベタな長めのギターソロがあるし、ここまでの3曲に比べると随分聴ける曲であるが、単体で聴くとやっぱり少しおかしい感じになるんだろうか。

5. 精神病棟二○一号室の患者は、精神病棟二○一号室の患者で、精神病棟二○一号室の患者の、精神病棟二○一号室の患者が、精神病棟二○一号室の患者と、精神病棟二○一号室の患者に、精神病棟二○一号室の患者を、精神病棟二○一号室の患者も、精神病棟二○一号室の患者な、精神病棟二○一号室の患者へ、精神病棟二○一号室の患者や、精神病棟二○一号室の患者?精神病棟二○一号室の患者。 / 御伽
耳にキンキンするミックスが痛々しい疾走煽り曲。ライブでは逆ダイの嵐*1なんだろうな・・・と思わせる「ヴャァィ!(早口語り)ヴャァィ!(早口語り)」というサビは、延々何分もやりそうだ。どう考えても万人受けしないが、好きな人は知名度関係なくとことん好きなんじゃないかと思わせるタイプ。この最後の「タァクッ」ってホントは何て言ってるんだろう・・・

6. Virus / Vierge
三連ベースにボーカルのかすれ声が乗っかるありがちな導入のヘドバン曲。構成もどこかで聴いたような気がする、ライブ煽り曲のおいしいとこどりという印象で、ライブしか意識していません感が清々しい。放り投げシャウトからのツタツタツタツタなんてベタすぎる。十字でも切りそうなタメから「ブラゥクンヴァイス!! ブラゥクンヴァイス!!」(と聞こえる)というシャウトを連発するあたりもベタ。歌唱力は当然すこし足りない。

7. Eyes for me... / Ma'feiL
ビジュアル系のお約束、今度は「扉が開く音」ですね・・・そしてザカザカンというギターのリフレインに乗せた語り、「腐乱人形・・・」というキメゼリフ、ツーバスが似合いそうな疾走とイントロでもうおなかいっぱい。途中から完全に音程が行方不明になるボーカルがすばらしい。冷静に聴くとものすごい音痴なのだけど、それをあまり感じさせないのは勢いの成せる業なのか。

8. Temptation / Loon Eye's Millyie
このバンド、「妖幻鏡-moon-」にも参加してるんだけど、こんな感じだったっけ・・・。楽曲はコテコテバンドがたまにやるちょっとジャジーな要素を加えてみました的な曲調。サビに向けてはッザェィ!ってシャウトを交えながら盛り上げていくような構成でいてさっぱり盛り上がらないというつくり。そしてサビのメロディーはどこかで聴いたことあるような・・・。微妙に音を外しているのがいいと思う。ツボを押さえた大サビのブレイクなど、いろいろな要素を盛り込んでおり、ビジュアル系の一つのテンプレートとしてもいいのではないかと思わせる完成度である。ただし、6分と長い。

9. 自殺志願者へ… / ギロチン
ライブ録音みたいな音を小さく入れる導入で始まるツタツタ系楽曲だが、曲の雰囲気がコロコロ変わって面白い。ボーカルは妙にメロディアスでのっぺりとしている。もちろん歌唱力は足りない。緩急をつけた間奏が印象的で、ライブではけっこう楽しい曲になっていたのではなかろうか。リタルダンドで終わるというのも新鮮で、いろいろ盛り込んでみました系の「Temptation」と曲順が並んでいるのは必然、なのかも。

10. 生命の残骸… / MISERY
ビジュアル系にあまりない逆回転をイントロとアウトロに盛り込んだ短めのツタツタ曲。ラァラァラァラ〜ラ〜というコーラスチックなボーカルが左チャンネル、語りが右チャンネル、しかもボリュームはほぼ対等というなかなか不快なつくりで、ボーカルが中央に寄っても音量バランスは変わらない。あと、音がかなり悪い。AMラジオっぽいイメージで作ったのだろうか。

11. Sabbato / Sito Magus
劣化モワディスモワといった趣のゴシックバンド。曲のタイトルもそれっぽい。前の曲からつながるとものすごい高音質に感じる。スロー〜ミディアムテンポでの大仰な演奏、シンセによるストリングスやオルガンの導入、低音ボーカルと、まあそういうバンドはモワディスだけではないけれど、manaの名を思い浮かべずにはいられない。ボーカルが伸ばしすぎのきらいはあるが、これといった問題はなく、本盤随一の「聴ける」曲だと思う。編者の同意は得られなかったけど。

12. 終末の序曲 / Eye for you
曲を支えるメロディー自体はそうおかしくないと思うんだけど、妙に圧縮したような演奏(ギターがおかしい)とかリバーブかけすぎのダメなボーカルがガタガタ感を醸し出している。音質としては賛美歌の「EGOIST XX」っぽい。ニューウェーブ時代の音作りの名残とかそういう感じなのだろうか。それにしてもボーカルがイッている、Eye for youはミニアルバムを持っているが、こんなヘタクソじゃなかったぞ・・・と思いながらミニアルバムを確認したら、この時期の面影がほんの少しあった。それでも、別物のバンドと思った方がいいくらい完成度が違う。思っていたら、ボーカルはミニアルバムと違う人のもよう。LUNA SEAっぽさがなくもない、という雰囲気だが、ごめん忘れてください

13. マ・ネ・キ・ン / au†ism
糞音質の一発録りっぽいツタツタ曲。ボーカルは発狂系、タイトルからしてももしやアリエネマリアージュが好きなのかな?という印象を受ける(→指摘を受けましたがアリエネマリアージュの前身バンドでした。「アリエネマリアージュが好き」どころか彼らこそがアリエネマリアージュ!!)。ドラムがモタらないように一生懸命叩いているのには好感が持てる。一旦ブレイクを入れたら取り返しのつかないレベルまで一気にガラガラと崩れていくのがまたいい。誰か録り直そうと言わなかったのか。レンタルスタジオの時間が迫っていたのかな。

14. 蒼月華 / Eve'Zera
落ち着いたシンセの音に乗せて、陶酔した語りが1分続いたと思ったら緩急つきまくりの演奏でちょっと慌ただしい。ボーカルはメロディアス、ここまでの流れからすると随分とマトモに聴こえるが、これ単体で聴くとやっぱり微妙な部類に入るであろう。イントロやアウトロで使っているゆったりしたフレーズで押し切っても面白いように思うが、この緩急がキモなのかも。

15. タナトスの華 / Zeele
エルドラドの「砂の王国」とかそのあたりを想起させる王道のミディアムバラード。レベルとしては数段落ちるけど、ミディアムバラードのテンプレートに忠実に作ったらこうなりました、という印象で、ボーカルがやや曲調に合っていない、ファルセット部分が苦しそう、というところはあるものの、全体的にはそこまでおかしな感じはしない。ただ、6分50秒はちょっと長すぎやしないか。

16. 腐食ノススメ / 螺旋
これもツタツタ曲。ツタツタボーカルの一種の型である、何を言ってるかわからない高めの声がさらに音程を上げながらシャウト気味に放り投げるスタイル(言語化すると伝わりづらい・・・)をとっている。覇叉羅の「SLAVE」みたいな感じ、と言えばいいだろうか。収録されているツタツタ曲の中では音のバランスがもっとも良く、聴きやすい。サビの「アェッヴェッ」「イィ゛ヤァゥトゥラァァイ」という掛け合いがとにかく耳に残る。サビ後の「腐りきった〜」というリフレイン、「〜したとさ」という語りが厨二的雰囲気を醸し出していてなかなかいい。

17. Secret Love / Platina
実質の本編ラスト曲はペニシリン千聖の「Venus」みたいなバックに乗せたデジタルロック。ここでいきなりデジタルロックとは大胆な選曲。まあこれだけなら普通の曲で片づけられるのだが、3分半過ぎからガラリと曲調を変えてきており、そのせいで曲が変わったのかと毎回ディスプレイを確認してしまう癖がついた。この30秒程度の中間の歌謡曲調のパートがヒドく、曲に対する印象を決定づけているように思う。中間パートが終わるとまたデジタルロックに戻って転調の大サビへ突入、大サビ前のキメのフレーズはベタだけど爽快感あっていい。で、大サビが終わるとまたスローに戻って聴きたくもないファルセットを聴かされるという有様! たぶんこのパートはライブではさぞやヒドいことになってたんだろうなあと思う。ライブ映像を見てみたい。

18. 神従 -old style- / Gravel
最後は編者の参加する同人音楽ユニット、Gravel(活動休止中)のレア音源。本編終了後のボーナストラック的位置付けでいいと思う。この曲はサビ前のシャウトと語りが混沌としてるところがいいんだよなあ。ベスト盤に収録されているバージョンとは異なり、old styleというだけあってデモ音源版で、リマスタリングが施されているとのこと。ボーカルもベスト盤で録り直してるっぽい。ベスト盤バージョンと比べると楽器の音がはっきりしていてそれがすっきりした印象を与え、個人的にはこちらのバージョンの方が好み。もっとも、ベスト盤のほうは敢えて音質を落としているところもありそう。なお、ギターソロのフレーズはベスト盤と全然違う。

<まとめ>
Gravelを除いた17曲でイケる曲、アカン曲を挙げてみると、ふつうに聴ける個人的トップ3はSito Magus、Loon Eye's Millyie、Zeele。Loon Eye's Millyieはいろいろ書いたけどこの中では相当上位ということでいいと思う。
これはアカンワースト3はQROSS、au†ism、MISERYかな・・・。レビューを書く前から何度も聴いてるし、レビューを書くためにまた何度か聴いているため、正直ある程度慣れてしまっており、言うほどヒドいと思えなくなっているが、冷静な耳をもって考えるとこのあたりがやばいのではなかろうか、と。初聴のインパクトは断トツでQROSS。

*1:嵐と呼べるほど客が来ていたかは知らない